生活習慣病とは文字通り食事、睡眠、運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの毎日の習慣が原因となって起きる症候群、すなわち病気のことです。以前には成人病と呼ばれていました。生活習慣病には高血圧、肥満・肥満症、高脂血症、糖尿病、ガンなどがあります。またその病気が引き金となって、心臓病、脳疾患などに発展する可能性もありますので、軽視しては命にかかわる危険性があります。
どの病気もそうですが、生活習慣病は特に自覚症状がありませんので毎日の生活を見直し予防することが何よりも1番大切です。
高脂血症
高脂血症とは血液中の脂質(脂肪)、特にコレステロール(LDLまたはHDL)と中性脂肪(TG)、リン脂質が増えた状態のことをいいます。正常値の目安は、空腹時に総コレステロールが240mg/dl以下、中性脂肪が150mg/dl以下、また高脂血症に糖尿病や高血圧症を合併している場合の総コレステロールの適正値は200mg/dl以下です。
高脂血症の原因には遺伝的な体質、肥満、運動不足、食べすぎ、飲み過ぎなど、また女性は更年期になるとコレステロール値が上がりやすくなるので注意が必要です。高脂血症は全く自覚症状がありません。この血液中の多すぎる脂質が血管壁に蓄積して血液の通り道を狭くし、動脈硬化の原因になります。高脂血症のうち、特に問題になるのは、高コレステロール血症、高中性脂肪(トリグリセライド)血症の二つです。狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの原因となる動脈硬化を引き起こす原因となります。
高血圧
高血圧症は常に血圧が高い状態のことで、原因不明の本態性高血圧症と何らかの病気に基づく二次性高血圧症があります。日本人の高血圧症の90%を占める本能性高血圧症の原因は不明とされていますが、食塩の摂取量が多いほど血圧が高くなる危険が増しますので、1日の塩分摂取量の目標値は10g以下、5~6gが理想的といえます。過度の飲酒は血圧の上昇を招き、反対に少量のアルコールは血管を拡張し血圧を下げます。ただアルコールは習慣性が強くアルコール中毒にならないよう気をつけましょう。また喫煙はそれだけでも内臓に負担をかけ、肺がんなどの病気の原因ともなり大変有害ですが、過度の飲酒とタバコとの併用によって心臓の病気になる危険性はさらに高まります。
肥満は高血圧の他、糖尿病や高脂血症も引き起こしやすく、現代人の避けて通れないストレスの蓄積や疲労と睡眠不足も高血圧を助長します。高血圧の恐ろしい点は高血圧そのものよりも動脈硬化、脳卒中、心臓病、脳出血などの合併症を引き起こすことです。どれも自覚症状がないためサイレントキラー(沈黙の殺人者)と呼ばれています。手遅れにならないうちに早期発見、治療、そして早急な生活習慣の見直しが必要不可欠といえます。
夜間の睡眠時間が5時間以下の中高年者は高血圧のリスクが高い
米国で32~59歳の4,800人を対象に8~10年追跡した研究によると、7~8時間睡眠を取る人の高血圧発症率が12%であったのに対し、5時間以下の人では24%であったことが判明しました。
運動するなら日に何回かに分けて細切れが高圧効果がある
医学誌で1日4回の短時間歩行運動は、1日1回の長時間歩行運動よりも降圧効果の持続時間が長いという報告が掲載されました。
糖尿病
糖尿病とは高血糖症とも呼ばれ、膵臓からのインスリンというホルモンの分泌が低下したり、作用が十分でないために慢性的に高血糖が続いている状態のことで、食前食後に関わらず、血糖が200mg/dl以上、または空腹時血糖が、126mg/dl以上で糖尿病と診断されます。
正常な人の血糖値は空腹時に60~110mg/dl未満で食後でも180mg/dl以下で、それほど血糖の変動はありません。それに対して糖尿病の人は血糖が高く、しかも変動が激しいことが特徴といえます。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの出が悪いほど、治療を受けていても血糖値の変動が激しく、高血糖低血糖を繰り返します。
また自覚症状のない高血糖ですが、その状態が5年、10年と続くことにより、血管が脆くなる動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性足病変、急性合併症の代表例としては糖尿病性昏睡と急性感染症といった合併症が起こってきます。糖尿病の人は血糖値を厳しくコントロールして合併症を起こりにくくすることが可能ですので、糖尿病の予防とともに適切な治療が大事です。
糖尿病の種類
糖尿病には、インスリン欠乏による1型糖尿病と、インスリンが分泌されるもうまく働かない2型糖尿病があります。
1型糖尿病の原因は先天的なものが多く、ウイルス感染や免疫系の遺伝的要因が関係しているのではないかといわれています。日本人には比較的少ないとされ、インスリン注射をすることなどで血糖値を管理して日常生活を普通に送ることが可能です。
2型糖尿病のほとんどは、食べすぎ、飲みすぎ、肥満、運動不足、ストレスなどといった、不健康な生活習慣が原因で起こります。長年の生活習慣の乱れによってインスリンが分泌しにくくなったり、インスリンを受け取る細胞の感受性が鈍くなることで高血糖状態が慢性化し、糖尿病の原因となっていることが2型糖尿病の特徴です。2型糖尿病は生活習慣を改善すれば予防することができる糖尿病であるといえます。日本では糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病です。過食、運動不足、ストレス、肥満が誘引となってインスリンの働きが低下し、糖尿病を引き起こすといわれています。
糖尿病は無症状で進行する
糖尿病の症状は一般的に初期には目立つ症状がないといわれています。それでものどが渇きやすい、トイレが近くなる、疲れやすい、などといった症状は糖尿病の初期症状として良く聞かれますので注意が必要です。
その他にも、尿に泡が出て甘い臭いがしたり、手のひらが赤と白のまだらになるなどといった兆しも糖尿病の初期には見られることもあるので気をつけましょう。特に成人に多い2型糖尿病は無症状で始まることが多いと言われています。たとえ何も症状が出ていなくても健康診断を定期的に受けることで糖尿病を早期発見・早期治療できるようにすることが大切なのです。また糖尿病の患者の中には、血圧やコレステロールも高いことが多く、糖尿病、高血圧、高脂血症などが重複して発症することもあります。こうした生活習慣病が複合して発症すると血管の動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳梗塞の危険も高くなりますので注意しましょう。
糖尿病の予防と改善のための食事
糖尿病の予防と改善のためには食事の内容と食事時間がとても重要です。そんな食べ物をどう食べるかという食事の習慣の問題が糖尿病の発症に関して影響が大きいと言われています。食事は腹八分目を1日3回規則正しく食べ、バランスの良い食事を心がけて、カロリーの高い動物性食品や揚げ物、お酒の飲みすぎなどに気をつけましょう。
食事以外にも適度な運動や質の良い睡眠も大切です。疲れやストレスを溜め込まないでリラックスして過ごすようにします。また野菜を多く取ることでビタミンやミネラル、植物繊維を摂取できます。食物繊維はコレステロールや血糖値を下げるとも言われ、カロリーも抑えてダイエットや便秘にも効果的ですね。また野菜などに豊富なポリフェノールには血糖を下げる働きもあります。野菜の摂取が多ければ多いほどがんになる確率も下がるといわれています。
また外食やファストフード、デパ地下のお惣菜やコンビニ弁当などを常食することは、糖分、油分、カロリー、添加物などを摂取しすぎてしまうので注意しましょう。テイクアウトや外食では材料も料理法も健康的なものかどうか心配なので、常食にしては健康を害します。コンビニで売られている食べ物や飲料、特にスポーツドリンクにはかなりの糖分が、お茶などのノンカロリードリンクにも添加物が含まれています。添加物は体脂肪の代謝を妨げる働きがあってダイエットには逆効果なのでできるだけ避けましょう。
糖尿病にはダイエットと運動が重要!適正体重を維持しよう
肥満で体脂肪が多くなると、インスリンが正常に分泌されても十分に働くことができなくなるインスリン抵抗性になることがあります。ダイエットで食事に気をつけて肥満を防ぎ、適正体重を保つことは、糖尿病を予防し改善するためにもとても重要です。運動療法と食事療法を並行して行う健康的なダイエットがおすすめです。もちろん運動する前に医師の診断を受けることも大切です。
肥満を防ぐためには、食事の内容を見直して油脂や糖分の過剰を防いで、ゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。良く噛んで食べることで、脳が満腹感を感じる時間=15分ほど、の前に食べ過ぎることを防ぎます。ゆっくり良く噛んで食べることで血糖値の上昇もゆっくりになり、インスリンの分泌も少量ですみます。そして運動をする習慣も健康のために必要です。運動によって、インスリンの感受性が高まりますし、高脂血症や高血圧の改善にも良い影響を与えます。運動をすると筋力や心肺機能が向上し、何よりもストレスの解消になります。
糖尿病の改善には激しい運動よりも、気軽にできる軽い有酸素運動のウォーキングの方が効果的といわれています。メタボリックシンドロームや糖尿病予防のためにも一日2回、食後に一回20~30分、週3回以上のウォーキングがお勧めです。
生活習慣病と内臓脂肪について
内臓脂肪のはかりかた
内臓の脂肪って目に見えないので、一体自分の内臓に脂肪がっまっているかわからないので、内臓脂肪のたまり具合はどうやって調べるかというと目安の一つとしてウエストとヒップ比を調べる方法があります。ウエストのサイズとヒップのサイズの比で内臓脂肪がついてきるかほぼわかるといいます。ウエスト÷ヒップの値を計算して、男性1、女性0.9以上の場合には要注意です。内臓脂肪がついて生活習慣病の危険が高くなっているといわれています。
内臓脂肪の影響
内臓に脂肪がたまるといろいろな生活習慣病がおこりやすくなるので問題視されています。高脂血症もその一つですが、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪など)が増えると本来スムーズに流れるはずの血液がドロドロして血管にも詰まりやすくなってしまいます。血流も悪くなり高血圧を引き起こしやすくなります。そしてねばっこくなった血液は血管の内側にたまって動脈硬化をおこします。ところが朗報です!内臓にたまった脂肪を減らすと、増えた血液中の脂肪分も減って血液もサラサラした状態に戻るのです。血液のスムーズな流れを保って、血圧を正常に健康に過ごすためにも、食事や運動などの生活習慣に気をつけて内臓脂肪を増やさないようにしましょう。
内臓脂肪と動脈硬化
内臓に脂肪がたまっている場合には、生活習慣病をいくつも同時に合併しやすいといわれています。
生活習慣病のひとつひとつがたとえ重症ではないにしても、いくつか合併して発症すると動脈硬化が進みやすくなります。動脈硬化の恐さは自覚症状がまったくないのにゆっくり病状が進んでしまい、ある日突然血管が破裂したりして命にかかわることです。生活習慣病の恐さともいえますが、何の症状もなくてはなかなか病気に気がつくことができません。動脈硬化が心臓の血管で起きた場合は血液が流れにくくなる狭心症や、心臓の血管が詰まって心筋梗塞を起こしてしまいます。このような心臓病にも、一見無関係にも見える内臓脂肪が関係していることがわかっています。肥満にならないよう、肥満を改善するよう、普段から食べ物や運動に気をつけましょう。
内臓脂肪型といわれるりんご型肥満
りんご型肥満は別名・内臓脂肪型肥満とも言われ、内臓のまわりに脂肪が蓄積する肥満タイプです。
中高年の男性や閉経後の女性に多く見られる肥満タイプでビール腹のようにお腹回りに脂肪がついて太くなってしまう特徴があります。しかし内臓脂肪は皮下脂肪に比べると、つきやすいですがダイエットや運動などで減らしやすいという特徴があります。生活習慣を変えることで比較的落とし易い脂肪なのですね。
また洋ナシ型肥満は皮下脂肪型肥満とも呼ばれ、特に下腹部、太もも、腰やおしりのまわりの皮下に脂肪が蓄積 するタイプで、女性に多いと言われています。
りんご型肥満は、特におなかの周りに脂肪がたまるタイプで、欧米人などに良く見られる肥満タイプです。りんご型肥満は特に男性に多く見られ、改善せずにそのまま放っておくと高脂血症や糖尿病になることがあり、注意が必要です。りんご型肥満から抜け出すためにはバランスのよいカロリーの高すぎない食事(野菜を中心に豆腐などの良質たんぱく質、脂身の少ない鳥ささみなどの肉や魚、実精白穀類、果物などを食べ、アルコールを控える)でダイエットを心がけ、運動など健康的な生活習慣の継続がとても重要なのですね。昔ながらの和食は海外でも評価が高まっていますが、りんご型肥満の予防という点絡み手も大変優れているのです。
また女性ホルモンが大幅に低下する閉経後の女性も男性と同じようにりんご型肥満になりやすいので注意が必要になります。年齢的にも基礎代謝量が減りカロリーを消費しにくくなるので、食事内容を低カロリーにし、定期的に運動をしてりんご型肥満にならないようにしましょう。
以前は成人病と言われていた病気のほとんどが現在は生活習慣病と呼ばれています。
成人病と生活習慣病の違いは 成人病は、大人になったらなる病気というイメージが強いですですが、子どもでも成人病になるのです。それも、低年齢化しています。これでは、成人病とはいえませんね。実は、成人だからなるわけでなく、生活習慣に原因があるからなるのです。