生活習慣病である高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、高尿酸血症を放置することで起こる命に関わる疾患について説明します。生活習慣病は、どれも進行の過程では自覚症状はほとんどありませんが、どの疾患も致死的な疾患や、日常生活に大幅に支障をきたす疾患の引き金になります。
たとえば、高血圧は、動脈硬化の原因となるため、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、腎臓病、閉塞性動脈硬化症の原因になります。
また、糖尿病は、糖尿病性腎症により、腎臓の細い血管が障害されて、腎機能の低下を招き、腎不全にまで至ると人工透析が必要になります。糖尿病性網膜症により、視力低下や失明の原因にもなります。糖尿病性神経障害により、手足の知覚鈍磨や麻痺のほか、排泄障害や消火器症状、インポテンスの原因にもなります。そのほかにも、高血圧と同様動脈硬化を引き起こし、脳卒中、心臓病のリスクが健常人とくらべ何倍も高くなります。
高脂血症は、動脈硬化のもっとも大きな原因です。特に心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の直接的な原因となることが多いです。
メタボリックシンドロームは、高血圧(とまでは行かなくても、少し血圧が高めの人)、糖尿病(とまでは行かなくても、血糖値が少し高いなどの糖代謝の異常がある人)、高脂血症(とまでは行かなくても、脂質代謝異常がある人)に内臓脂肪が溜まっていたら、とても危険であることを呼びかけている概念ですので、動脈硬化が原因となって起こる病気(特に狭心症、心筋梗塞などの心臓病)の大きな原因となることはお判りになるのでは、と思います。
高尿酸血症は、痛風という、ものすごい痛みを伴う病気の原因となりますし、動脈硬化の原因としても考えられるようになってきています。
生活習慣病を放置することによって起こる代表的な病気、脳卒中、心臓の病気、腎臓の病気についての知識と、それがいかに日常生活に支障を来すかについて紹介します。

生活習慣病が引き起こす脳卒中

高血圧が原因で起こる合併症として日本人に多いといわれているのは、脳卒中です。脳卒中とは、脳の血管になんらかの障害が起こり、脳神経細胞が損傷をうけたり、壊死におちいる病気の総称として用いられます。脳卒中による死亡は年々減少していますが、脳卒中になった後の予後は深刻です。脳卒中により脳の神経細胞に流れる血液が途絶えると、酸素や栄養分の供給が行われなくなります。このような状態が数分続くだけで、脳細胞は修復不可能になり、その結果、体の麻痺や意識障害などのさまざまな症状が現れます。発作時の処置や手当ての早さ、その後のリハビリなどで回復しますが、普段の生活習慣に気をつけることで予防していくことがより望ましいことは言うまでもありません。大まかにタイプわけすると、脳卒中は次の2タイプに分けられます。

  1. 脳の血管が詰まるタイプ 脳梗塞
  2. 脳の血管が破れるタイプ 脳出血、脳塞栓症

脳梗塞はどのような病気?

脳梗塞は脳の細動脈が血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍塊などが詰まり血流が止まることで、脳細胞が壊死する病気になります。脳梗塞には脳血栓と脳塞栓の2通りがあり、動脈硬化などの影響があると詰まりやすく脳梗塞になりやすくなります。この動脈から酸素や栄養物を供給されていた脳神経が壊死になり、これが発作となります。脳梗塞は次の3タイプがあります。

  1. ラクナ梗塞と呼ばれ、高血圧により脳の細い血管が詰まるタイプ
  2. アテローム血栓性脳梗塞と呼ばれ、高脂血症による動脈硬化で脳の太い血管が詰まるタイプ
  3. 心原性塞栓症と呼ばれ、心房細動、急性心筋梗塞、心臓弁膜症の影響で、心臓内にできた血栓が脳血管をふさいだ時に突然の発作としておこるタイプ

心原性脳梗塞

心原性脳梗塞は心臓にできた血栓が、血流に乗って脳に流れて血管を詰まらせるタイプの脳梗塞のことをいいます。脳梗塞患者の20%を占め、60~70歳代の人に多くみられます。心房細動(心房が1分間に約300~500回と正常の5倍以上の速さで不規則に細かくふるえて正常な拍動ができない影響で心臓内の血液が停滞して、血のかたまりや血栓ができる状態)により血のかたまりや血栓が脳血管を詰まらせて、血流がストップした脳組織が壊死(死亡)した状態を心原性脳梗塞と呼びます。

脳梗塞の症状

半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などの症状がみられます。脳血栓では症状が数日かけてゆっくり出てくることが多いのに対し、脳塞栓では突然、意識障害がでてきます。前ぶれとなる症状にはふらふらしてまっすぐ歩けない、片方の手足のしびれ、片足を引きずる、手足から急に力がぬける、ものにつまずき易い、片方の目が一時的に見えなくなる、物が二重に見える、言葉がでなかったり理解できない、急にめまいがするようになったなどの症状がみられることもありますので、病院で検査してもらいましょう。

脳梗塞の診断

脳梗塞が脳血栓によるものか、脳塞栓によるものかを正確に診断するのは困難です。脳梗塞が疑われる場合、脳梗塞や脳血栓の起きた部位を確認するために、CT、MRI、脳血管撮影などの検査を行います。

脳梗塞の危険因子

脳梗塞の危険因子は、60才以上の人、脳卒中の家族歴のある人、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、大量飲酒、ストレスなどです。血栓は、心臓弁膜症、急性心筋梗塞、心筋症、不整脈などの病気の際にでき、脳まで運ばれると脳血栓が発症します。

脳梗塞の治療法

脳梗塞になって6時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。発症時にカテーテルを使い血管の血流を再開通させることも可能です。頚動脈の血栓内膜剥離術とバイパス手術により脳血流を改善させる手術も行います。

脳梗塞のリハビリテーションの目的

社会復帰するまでの間にいろいろな訓練が必要になります。これがリハビリテーションです。リハビリテーションの目的は残された機能を最大限に引き上げて家庭復帰や職場復帰をさせるために行います。

脳梗塞を予防するための注意事項

生活習慣改善をしましょう。塩分を控えめに(1日に10g以内に)、ナトリウムの排泄を促す食品(りんご、枝豆、バナナ、カボチャなど)を積極的に摂取するようにしましょう。血圧を下げる作用がある食品(乳製品など)やマグネシウムを含む食品(焼きのり、昆布、ごま)などを食べましょう。動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品は控えましょう。アジやサバ、イワシなどに多く含まれるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を積極的にとりましょう。適度な運動や日常で積極的にからだを動かし、太り過ぎに注意しましょう。十分な睡眠、休養、禁煙、節酒をしましょう。

脳出血とはどのような病気?

脳の血管が破れて出血し、脳内に血腫(血の塊)を形成したものを脳出血と呼びます。脳出血の多くは高血圧が原因になって起こります。脳出血の場所は大脳が85%、小脳が10%、脳橋が5%の割合です。脳の表面にある軟膜とくも膜の間に出血をおこした場合をくも膜下出血と呼びます。

脳出血の症状

頭痛、めまい、嘔吐、意識障害、失禁が症状として認められます。重症の脳出血の場合は、昏睡状態になり、死亡に至ることもあります。脳出血で半身まひ、言語障害、感覚まひなども起こります。

脳出血の合併症

脳出血の合併症としては、意識障害やまひが起こります。意識障害やまひが原因となり喀痰の排出ができなくなり、誤飲性肺炎を合併することがあります。消化管出血も多くの場合にみられます。

脳出血の原因となる病気

脳出血の原因となるのは高血圧、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などです。高血圧の状態が続くと、動脈硬化が進行して血管壁がもろくなり、内側から外側に強い血圧がかかることで血管が破れやすい状態になります。寒冷時、興奮したときなど脳出血が起こりやすい状態といえます。

脳出血の診断

脳出血を起こした患者さん、家族の話などをもとに診察所見から脳出血を疑って、脳出血の重症度や出血箇所などを推測します。確定診断をするためにはCTやMRI検査を行い、出血している場所や出血の大きさなどを診断します。

脳出血の治療法

出血が軽度の場合は、内科的に治療をします。薬物療法として止血剤、降圧剤、抗脳浮腫剤を投与し治療を行います。すなわち、厳重に血圧管理をしてマンニトール、グリセオールなどの高張利尿剤で頭蓋内圧の降下をおこないます。出血が中等度から高度の場合では、意識障害、運動障害が認められる場合には、手術にて血腫の除去をおこないます。

脳出血のリハビリテーション

脳出血での半身不随や言語障害などの重篤な後遺症を軽減するためにリハビリテーションを行うことが必要になります。

脳出血を予防するための注意事項

食事や運動など生活習慣の改善をおこないます。塩分を控えるようにし(1日に10g以内)、ナトリウムの排泄を促す食品であるりんご、枝豆、バナナ、カボチャなどを積極的に摂取しましょう。動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品を控えることも重要です。アジやサバ、イワシなどの青魚をできるだけ多く摂取し、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸を摂取しましょう。適度な運動で肥満を防止します。十分な睡眠と休養でストレスを解消しましょう。禁煙や節酒を励行しましょう。

脳卒中について

脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう病気です。急に倒れて意識がなくなったり、半身まひが起こったり、呂律が回らなくなったりするような発作が起きます。一時的な半身のマヒや手足のしびれや物が二重に見えたり、少しの間、言葉が出てこなくなったりというような前触れが先に起きていることも多くあります。これは脳の血管が一時的に詰まるために起こるもので、これに気づくと大きな発作の前に治療をすることもできますが、気づかないことも少なくありません。気がつかずにそのままにしておくと、本格的な発作が起きてしまうことがあるので前触れに気づくことと、気づいたら治療をすることが大切になります。
脳卒中になると脳の、詰まったり破れたりして脳卒中でやられた部分がコントロールをしていた、身体の働きができなくなります。身動きができないということはからだの片側がマヒをおこしたり、言葉が出なくなったり、ものが飲み込めなくなったりします。それから発作の後に寝たきりになってしまうと使わない筋肉が凝り固まって動かなくなるという合併症も出てきてしまいます。脳卒中は治療やリハビリでかなり回復します。ただし治療やリハビリが遅れてしまうと、治療やリハビリが遅れた分だけ回復が難しくなってきてしまいす。できるだけ早く治療をしないと病気が進行して症状が深刻になり、再発作が起きて命を失うことも考えられます。リハビリも可能な限り早く始めないと、合併症が出て筋肉が凝り固まってしまったり、症状が悪いままで固まったりするので早いうちに治療やリハビリを始めることで、回復効果はアップします。
脳卒中には脳梗塞と脳出血があり、脳の血管が詰まるタイプの代表が脳梗塞、脳の血管が破れるタイプの代表が脳出血になります。昔は脳出血が多かったようですが、今は脳梗塞が多くなっています。以前脳出血が多かったのは、高血圧の有効な治療があまりできなくてひどい高血圧の人が多く、栄養が不良で血管が弱くて破れやすかったからです。今は高脂血症や糖尿病などが増えたために、血管が詰まる脳梗塞が起こりやすくなっています。

脳梗塞

脳を養う血管が詰まるタイプで、次の3種類があります。(1) 脳の太い血管の内側にドロドロのコレステロールの固まりができて、そこに血小板が集まって動脈をふさぐ「アテローム血栓性梗塞」、(2) 脳の細い血管に動脈硬化が起こり、詰まってしまう「ラクナ梗塞」、(3) 心臓にできた血栓が流れてきて血管をふさぐ「心原性脳塞栓症」などがあります。脳卒中死亡の60%以上を占めます。

脳出血

脳の中の細い血管が破れて出血し、神経細胞が死んでしまうタイプ。高血圧や、年をとって脳の血管が弱くなり、血管が破れることが原因となる場合が多くなります。日中、活動しているときに、頭痛やめまい、半身マヒ、意識障害などの異変がおこります。脳卒中死亡の約25%です。

くも膜下出血

脳をおおっている3層の膜(内側から、軟膜、くも膜、硬膜)の中で、くも膜と軟膜のあいだにある動脈瘤が破れることで、膜と膜の間に溢れてしまった血液が脳全体を圧迫します。動静脈奇形がくも膜下出血の原因の場合もあります。突然激しい頭痛や嘔吐、痙攣などがおこりやすく、突然意識がなくなり急死することもあります。脳卒中死亡の10%強です。

一過性脳虚血発作

脳の血管が詰まるタイプのうちで24時間以内に回復するものになります。脳梗塞の前触れ発作ともいわれる。一時的に片方の目が見えなくなったり、ろれつがまわらない、半身がいうことをきかなくなるなどの症状が起こります。再び血液が流れると症状もなくなります。

心臓の病気(狭心症、心筋梗塞)

狭心症と心筋梗塞は、両者を合わせて虚血性心疾患と呼ばれています。
狭心症と心筋梗塞どちらも心臓の病気ですが、心臓はもともと血液を体内に循環させて、血液中の酸素や栄養素を体中に供給するための器官です。心臓自体にも、エネルギー源として血液を供給する必要があります。そのための血管を、冠動脈といいます。虚血とは、その冠動脈が狭くなったり、詰まってしまったりすることで、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給できなくなっている状態を言います。
狭心症と心筋梗塞の違いは、冠動脈が詰まっていて、血流が完全に途絶えている(心筋梗塞)か、動脈硬化で血管内腔が狭くなっているが、完全にはふさがっていない(狭心症)かの違いです。どちらも冠動脈の動脈硬化が原因で起こります。

虚血性心疾患

心臓の筋肉への血液の供給が減ることや途絶えることを虚血といいます。狭心症と心筋梗塞の2つをまとめて虚血性心疾患と呼んでいます。狭心症と心筋梗塞の大きな違いは、心筋が回復すのかどうかという違いがあり、狭心症は心筋が死なずに回復するのに対して、心筋梗塞は心筋が死んでしまうので回復する見込みがない状態です。どちらの病気も重症化すると、心臓のポンプ機能が弱くなる心不全や、虚血による重症の不整脈を合併して生命への危険が高まります。

虚血性心疾患の症状

痛みを感じる場所

虚血性心疾患での痛みは胸の中央、左胸部、左肩、首、下あご、みぞおちなど。胸痛が肩から腕などへ広がる(放散)こともあります。

痛みの性質

締めつけられるような、抑えつけられるような、重苦しいといった漠然とした痛みです。胸やけ、肩凝り、歯痛などが主な症状のこともあります。

痛みの続く時間

狭心症は数分から10分くらいです。心筋梗塞は数時間です。

狭心症では痛みの部位は明確でなく、手を胸全体にあてて痛みを表現することが多いようです。
心臓のある左側の痛みでは肩から手まで症状が出ますが、右側に症状がでてくることもあり、右側だから大丈夫と考えると危険です。1カ所だけに限定されず数カ所に現れることもあります。また、症状は,締めつけられるようなといった漠然としたものである点が特徴です。
狭心症発作時の症状は患者さんによって異なり、非常に多彩です。それだけに心臓の病気と思わない患者さんも多く、自己判断は禁物です。
特に糖尿病の患者さんでは神経障害により痛みのない虚血発作(無痛性心筋虚血)や、心筋梗塞になっても全く痛みがなく軽い息切れ程度の症状の場合は(無痛性心筋梗塞)があるので注意が必要になります。

狭心症と心筋梗塞が起こる原因

心臓と冠動脈の走行狭心症は心臓の酸素不足から起こります。冠動脈は心臓に酸素と栄養を供給している血管になり、左に2本(左前下行枝・左回旋枝)と、右に1本(右冠動脈)大きい血管があります。
冠動脈の動脈硬化が進行して血管が詰まり狭くなると血液が十分に送られないので、血液の需給バランスが崩れてしまい心臓が酸素不足の状態に陥ってしまいます。心臓が酸素不足の状態を虚血性心疾患と呼び、狭心症と心筋梗塞が代表的な虚血性心疾患になります。

また、冠動脈の一時的なけいれんの影響でも心臓は酸素不足となって発作がおこります。
狭心症と心筋梗塞の違いは、狭心症は酸素不足が一時的で回復すしますが、心筋梗塞は血栓などで冠動脈が完全に閉塞するので、血流が途絶えてしまい心筋が壊死を起こすので、心臓に大きな障害が残ることになります。

狭心症の発症は、冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による器質的狭窄と攣縮(けいれん)が、いろいろな程度で関わっていますが、主に器質的狭窄によるものが労作狭心症、けいれんによるものが異型狭心症として発症します。日本人の狭心症は攣縮の関与が欧米にくらべて多いとされています。

アテローム性動脈硬化による狭心症は、安定狭心症、冠攣縮による狭心症は、不安定狭心症とも呼ばれます。

心臓の病気の直接の原因になるの動脈硬化は、食習慣の乱れ(脂肪分のとりすぎ)や、コレステロールや中性脂肪の代謝に異常があるため、血液中のコレステロールが高くなり、冠動脈の中にたまる、アテローム性動脈硬化(別名、粥状硬化(じゅくじょうこうか)とも呼ばれます)です。しかし、だからといって血圧には注意しなくてもよい、というわけではなく、動脈硬化と高血圧は、一方が悪くなると、もう一方の状態も悪化させてしまうので、脂質だけではなく血圧にも注意を払っておく必要があります。

腎臓の病気(高血圧性腎硬化症、腎不全)

高血圧は、腎臓における病気もよく引き起こします。高血圧が原因となって腎機能が低下する原因には、高血圧性腎硬化症があります。腎臓は、細い血管の束のような構造をしているネフロンという組織が集まった器官です。
ネフロンの中の細い動脈に、高血圧による動脈硬化が起きると、腎臓の機能がだんだんと低下していきます。これを良性腎硬化症といいます。場合によっては、腎臓の中の太い血管である腎動脈で著しい硬化を起こしてしまうことにより、急速に腎機能が低下してしまうケースもあります。これを悪性腎硬化症といいます。

高血圧性腎硬化症の種類、原因、症状

種類 原因 症状
良性腎硬化症 高血圧を長く放置することで、動脈硬化が十数年にわたって進行していき、腎臓の血液量が減少することでおきるものです。高齢者に多く、特に50代~60代以上の男性に多く見られる病気です。 高血圧と同じく、肩こり、頭痛、めまい、動悸などの症状が見られます。また、軽い蛋白尿も出ます。
悪性腎硬化症 腎動脈の著しい硬化や動脈の炎症が原因で高度の高血圧を示し、腎臓は阻血状態となり、急速に腎機能が低下してしまいます。 血圧はかなり高くなり最低血圧も120以上を示します。尿タンパクは多くて、血尿もあります。眼底出血などを合併して失明することもあります。腎機能低下が急速でひどく、急性腎不全を起こしていることもよくあります。重症だと意識障害や痙攣などをおこしてしまいます。

高血圧性腎硬化症が進行すると、慢性的に腎機能が低下する慢性腎不全へと進行するケースもあります。この場合、腎臓の機能は正常の2割くらいとなると自覚症状が出始めます。血液中の老廃物の濃度が高くなり、はじめは倦怠感、無力感、頭痛、吐き気、嘔吐が起きますが、病状が進行してくるとけいれんや昏睡に陥り、危険な状態になります。病状の進行は、腎機能の低下の程度によって、自覚症状がない段階から、多尿や頻尿、むくみがおきて乏尿から尿毒症がおきるまで、さまざまです。